シニンノカゲ:6章part2
🕑 Added 2025-08-15 11:46:49 +0000 UTC
2. 姫咲トワイライト②
「美愛の鼻をくれ」
背後から白い手がにゅうと伸びてきて、私の鼻をちょんと触った。
「ちょっと、春香」
私は横目で、鏡に映る春香のニヤけ面を睨んだ。
春香はよく私の鼻を触ってくる。
何度注意してもやめない。
曰く、私の高い鼻が羨ましいという。
別に春香の鼻だって特別低いわけではないと思うのだけれど、本人は鼻が低いのが悩みだという。
私からしてみれば、春香の彼女曰く低い鼻が童顔で、愛嬌のある顔の要であるように思う。
アイドルみたいだし、春香はそう背が高いわけでもないけれど、スタイルも良い。
だから、男子からモテるのは春香の方なのだ。
私は、異性からよく近づき難いと言われる。
私は私を見つめる。
くすんで汚れた女子トイレの鏡には、私のこれまで散々フランス人形のようだと言われてきた大きな目が映っている。
両親共に純日本人のはずなのだが、確かにそういう風に見えるのも分からなくはないと思う。
小学生の頃なんかはよく、外人みたいだと揶揄われた。
あの頃のことを思い出すと、今でも胸が少しきゅっと痛む。
藤島小百合も、そういった胸の痛みを抱えて…最後には抱えきれなくなって──あんな結末を迎えたのだろうか。
校内で自死を選ぶなんていうのは普通ではない。
記録には残っていないだけで、よほどのことがあったのではないかと思う。
──今回のは、強敵だろうな。
きっと今回が最後だ。だから強敵なのは当然と言えば当然なのだろう。
藤島小百合の魂を救い、失踪事件も解決。そうなれば良いと思う。
きっと、そうなる。
そうなるに決まっている。
どんな困難が待っていても最後には笑っていられる。
私たちはきっと、この怪異まみれの物語の主人公なのだから。
主人公とは、勝つものだ。
私は私にそう言い聞かせる。
トイレから教室に戻ると、長く学校にいそうな教師たちから話を聞きに行っていた伽耶とヒヨコが戻ってきていた。
「ダメだったよ。どいつもこいつも藤島小百合がいたことすら知らないやつらばっかり」
伽耶は乱暴にうちわを仰ぎながら言った。
「えー。じゃあどうすんのぉ」
春香が得意の駄々っ子のような顔をする。
「伽耶ちゃん。やっぱりさ、"あの子"に聞いてみない?」
ヒヨコが恐る恐るちらりと伽耶の顔を見た。
伽耶はうーんと唸った。
「あの子って?」
私は伽耶の気むずかしげな顔を見る。
「"弘道(こうどう)"って一年の小娘。なんか幽霊とかに詳しくて、実際に私たちみたいに怪異を浄化させたりしてる」
「へぇ…うちの学校にそんな子が…」
「あー。弘道ってめっちゃキレイな子じゃん。あの子そうなんだ」
春香は弘道に覚えがあるのか、やけに驚いていた。
「少し前に例の小屋に立ち入って指導された生徒がいたって聞いたんだけど…それがどうやらその弘道って小娘らしいんだよ」
「小屋に?どうして?」
「さぁねぇ。ま、あそこ結構色々感じるから…引き寄せられたんじゃないの」
伽耶はなんだか興味なさげだ。
「藤島小百合のことを知ってるのかな。じゃあその子に聞いてみる?」
それが確実かもしれない。いやむしろそれしか無いのかもしれない。
「でもねぇ…あれだからさぁ」
伽耶は奥歯にものが挟まったような言い方をした。
「どうしたの?」
「なになになになになによ」
春香がもじもじと身体を揺らす。
「ちょっとした噂を聞いたんだよ」
伽耶はちらりとヒヨコを見た。ヒヨコはこくりと頷く。
「弘道って…怪異を"殺しちゃう"んだって」
伽耶は言いにくそうに小さく唇を動かした。
「殺す?怪異を?」
「どゆこと?怪異ってオバケじゃん。死んでんじゃん。もう」
「まぁ正確には…無理やり消滅させる…ってところかな。御札を使ったりとかするんじゃなくって…なんかヤバそうなもの使って一気に消滅させちゃうみたいだよ」
そんなことが単なる女子高生に可能なのか。
情報と御札頼りだった私には想像もできない。
「それ大丈夫な…」
春香が言いかけた時。
「すみませーん。須崎伽耶さんたちおられますかー!」
よく通る声が教室に響き渡った。
教室中の生徒が私たちを見る。
廊下には、活発そうなショートヘアの女子生徒がいる。暑いからか、セーラー服の袖を肩まで無理やり捲り上げている。
女子生徒の後ろには、まるで影のようにもう一人の女子生徒が立っていた。
◯
真っ黒く長い髪。二重瞼の切長の目。美白というより青白いに近い色白の肌。
弘道梨緒(こうどうりお)は、美しい中性的な顔立ちをしていた。
身に纏っているのは、私たちと同じ制服のはずなのに、なぜだか彼女の纏う制服は黒く見える。
美しいけれど、彼女から感じる周囲を寄せ付けない冷たい空気がその美しさを掻き消してしまっているようなそんな気がした。
「えーっと…須崎伽耶先輩に、来栖美愛先輩、美雲春香先輩、それから粟野陽生子先輩で間違いないっすね」
私たちを廊下に呼び出したショートヘアの女子生徒"富田和真(とみたかずま)"は確認するように私たち一人一人の顔を見た。
「なに?なーんかこの感じ、教師とか警察相手にしてるみたいで嫌な感じなんだけど」
伽耶は膝を軽く曲げ、和真と梨緒を睨む。
「要件は何」
和真は後ろにいる梨緒を見た。
和真の影のような梨緒がすうと音も立てずに前に出てくる。
「先輩たちが件の失踪事件を捜査していると聞きました」
梨緒は見た目に反して女の子らしい声で言った。
「そうだけど?」
「先輩たちは、藤島小百合さんをどうするつもりなんですか」
「どうするって?」
「そりゃあいつものように綺麗さっぱり浄化してもらおうと思ってるけど。ねぇ?」
伽耶は私たちを見た。私とヒヨコが頷くと、春香も遅れて頷いた。
「そうですか。この一件…私に任せてもらえませんか」
「はぁ?」
伽耶はオデコに皺が寄るほど眉を上げた。
「その方が確実だと思うんです」
梨緒は、はっきりきっぱりとそう言った。
「そうなの?」
梨緒があまりにはっきり言うので、春香がキョトンとした。
「馬鹿。なに納得しようとしてんの。弘道…あんたねぇ。怪異をかなり雑に処理してるって話じゃん」
伽耶が腕を組み、胸を張る。
「やむを得ない場合には、です」
「やむを得ないって…それだとさぁ…浮かばれないでしょ。その…魂がさぁ」
伽耶は身振り手振りをしながら言った。
「そうですね」
梨緒は意外にも伽耶のいうことを肯定した。
「怪異を凌ぐ力で怪異を滅した場合、怪異は消滅しますが…そこには"遺恨"が残る。これは、恨みの飛沫のようなものです。飛沫は周囲に飛び散り…それが他の怪異誕生に繋がったり、霊障に繋がることもあるようです。退魔師の行う正式な退魔術は、そういった遺恨も消し去る力を持ちます。だから退魔師は必ずしも情報による退魔を行うことがないんです。力による退魔でも問題はない。勿論、怪異に関する情報という武器があれば
より退魔を有利に、確実に行えるようですけど」
「へぇ…あ、じゃなくて!それくらいはまぁ…なんとなく分かってたけど。なんとなくは…」
伽耶は腕を組んだままぎこちなく首を縦に振る。
「で?それが分かってるならなんであんたに任せなきゃなわけ?」
伽耶が自分より少し背の高い梨緒を見上げ、睨む。
梨緒は見下ろすように伽耶を見つめ、ごくりと唾を飲んだ。
「見て頂きたいものがあります」
梨緒はそう言って私たちに背を向け、歩き出した。
真っ黒い髪がふわりと靡いて、華やかな良い香りが───
──否──
──血のような臭いが私の鼻腔に流れ込んできた。
気づくと私と伽耶は、顔を見合わせていた。
◯
真っ青な空に、裏山の木々の青々とした葉がくっきりと浮かんでいる。
暑さを強く感じさせる蝉の声のせいもあってか、真っ青な空を見上げているだけで私は立ちくらみした。
梨緒は私たちを校舎裏の小屋の前に連れて来た。
藤島小百合が命を絶ったという小屋だ。
事件があってから使われなくなっていた木造の小屋の屋根はほとんど崩れ落ち、壁だってほとんど朽ちて壊れてしまっている。
ほとんど廃墟である。
事件が起こってから約二十年ほど経っているはずだが、ここまで廃れるものなのだろうか。
単にこの二十年近くの間に大きな嵐とかそういうのがあって朽ちてしまったのかもしれないけれど。
梨緒と和真は迷いなく、立ち入り禁止の小屋に入っていく。
「ちょっとちょっと。まさか入るつもり?不良すぎでしょ」
春香がぎょっと口を開けて固まっている。
「生徒指導室行きとかになったらだるいってー」
「ぶーぶー言うな」
伽耶が春香の肩を叩いてお構いなしに小屋に入った。
「あっそー。私、見張でもしておこうかなー」
春香はぷいと小屋に背を向けた。
「ったく…。じゃあ頼んだよ」
伽耶は振り返らず、テキトーにそう言った。
「はーい。任せとけ」
入り口…と言って良いのか分からない戸の無くなった枠だけの入り口を跨ぎ、中に入る。
小屋の中は外からも丸見えだ。それでも、踏み入れた途端に外から見ているのとは違う、全く違う世界に入ってしまったかのようなそんな気がした。
気のせいか、裏山からやかましいほどに鳴り響いていた蝉の声が少し遠くに感じる。
心臓のあたりにぞあぞあとした痒みのようなものが走り、胸騒ぎがした。
教師に見つからないかという不安からか。
いや。
春香の"だるい教師発見レーダー"の感度は凄まじい。
見つかることは、まずない。
中は文字通りのゴミ屋敷だ。
グラウンドを平すための整地ローラーやトンボ、破れた袋から溢れ出る白い粉──袋には炭酸マグネシウムと書かれている──予備のものらしい椅子と机がいくつか…など使われなくなった備品が大量に置いてあった。
梨緒と和真は小屋の奥にある不気味なものを見上げていた。
黒い布で覆われているそれは、高さ2メートルほどはある。
日光を浴び続けたせいか、布はぼろぼろに傷んでところどころが裂けている。
裂け目からは、反射している日光が漏れていた。
姿見だ。
「まさかこれ…」
私が言うと、ヒヨコが私の陰に隠れた。
藤島小百合の遺体は姿見の前で──。
私は咄嗟に天井を見上げた。
視界に映る真っ青な空を、かろうじて残った朽ちかけた梁が遮っている。
藤島小百合はこの梁に、ロープを括り付けたのだろうか。
たった一人で、ここに来て、たった一人で、ロープを括り付けて、たった一人で──。
鼻のあたりがつんと痛んで、目の奥が熱くなって来た。
「こんなもんさっさと撤去すりゃいいものをわざわざ残しておくから…」
伽耶は苛立っているような、それでいてどこか哀しげに言ってため息を吐いた。
「見て頂きたいのはこれではないんです」
梨緒は姿見に背を向け、地面を指差した。
「うん?なにこれ…」
伽耶が訝しげに眉を上げた。
砂埃でまみれた床をよく見てみると、何かの模様らしきものが刻まれているのが見えた。
見たことのない模様がいくつも、曲線に沿って刻まれている。
曲線は一周して、円形を成している。
「なんなの?これは」
模様を覗き込みながら、伽耶が梨緒を見る。
気のせいか、伽耶の額には大量の汗が浮いていた。
暑さのせいか。
「分かりません。でも…こんなものが最初から小屋にあったとは思えない。これ…彼女が…刻んだものだと思えませんか」
梨緒は模様を指差してから、姿見を見やった。
模様はちょうど、姿見の前にある。
「あぁ…そういう…」
伽耶は納得したように頷いた。
汗がだらだらと頬を伝っている。
「なるほど…この小屋から感じる嫌な気配は…どうやらこの模様から漏れてるみたいだね…」
伽耶は汗を拭った。
「はい。間違いありません。私たちは多少、耐性があるので立っていられますが…そうでない者はここに近づくことすらできない」
ここに誰も近寄らないのはそのためです。と梨緒は続けた。
「例の女がこれを描いたとして…なんだっていうの?」
伽耶が腰に手を当てる。
「もし、彼女がこんなものをわざわざ描いて自死をしたのなら…それはなんらかの"儀式"ではないかと」
梨緒が言うと、隣に用心棒のように立っている和真も頷いた。
「儀式…ねぇ」
「あ、悪魔転生とか…?」
ヒヨコが私の背後から恐る恐る顔を出した。
そんなお伽話のようなことがあるものかと私は思ったが、梨緒は"その可能性も…拭えないですね"と肯定的に答えた。
「いや流石に悪魔ってことはないでしょ。悪魔は」
伽耶が頭の後ろで手を組んだ。
「この模様もそもそもデタラメって可能性もあるでしょ」
伽耶は地面の模様をつま先で突いた。
私は、また模様の上の梁を見上げた。
この模様がデタラメだとしても。
こんなものわざわざ刻んで命を絶ったのは事実だ。
意味もなく刻んだということはないだろう。
これは彼女なりの意思表示だったのか。
死人に口なし。そうならぬよう。
彼女は。"藤島小百合"は、追い詰められていたのだろう。
死を選ぶほどに。
彼女のことを思うと、悲しみが込み上げてきた。
喉の奥が震えて、胸が膨れ上がる。
込み上げる悲しみに勝手に涙が溢れて来て、私の視界が滲む。
ぎゅっと目を瞑り、涙が滑り落ちる。
涙でぼんやりとした視界が、晴れる。
視界は、モノクロオムだった。
私の目の前──大きな姿見の前に、黒い髪に白いカチューシャをした細身の少女が立っている。
少女の真上には、梁から垂らされた縄がある。
──もう耐えられない…もう…。
少女は啜り泣きながら、屈み込んでいた。
私は悲しくて、かなしくて──。
「ちょっと美愛!大丈夫!?」
伽耶が私の背中をばちんと叩いた。
私の視界に再び色が戻る。
目の前にはもう、少女はいない。
それなのに。
涙が止まらない。ぼろぼろぼろぼろと涙が溢れて止まらない。胸が啜り泣きで震えている。
私は、私の意思で泣いているのかどうか分からなくなっていた。
「大丈夫…?」
ヒヨコは恐る恐る私の背中に手を伸ばし、震える手で私の背を撫でた。
「ちょっとちょっとなになになに何事?」
春香が慌てた様子で小屋に入って来た。
「美愛が…」
ヒヨコが泣きそうな顔で私を指差す。
「今そこに…女の子が…」
私は、姿見のところを指差した。何故か息が切れている。
「女の子?」
伽耶が首を捻る。
「そこに…姿見の前に」
私はそう言ったが、皆、首を傾げるばかりだった。
さっきのあのモノクロオムの光景は、誰にも見えていないのか。
どうして自分だけ──。
「もしかしてあれは…藤島──」
私が彼女の名前を言い掛けると、梨緒が人差し指を口に押し当てた。
「彼女の名前を無闇に呼んではいけません。ここではとくに…。どこで聞いているか分かりませんよ」
梨緒は静かに、しかし力強くそう言った。
ごくりと誰かが唾を飲む音がした。
裏山から響き渡る蝉の声がケラケラと嘲笑うような声に聞こえた…気がした。
「私は、彼女がなんらかの儀式のために自ら命を絶ったのではないかと推測します。その場合…彼女は自己のために命を捨てたことになります。そして…死してから人間たちを攫っている。これは…同情しようのない行為です」
梨緒は淡々と言った。隣の和真も大きく頷く。
「で、でも…自殺に至るまでの経緯はまだ分からないし…。儀式だって、何か悲しいことがあったから行うことになったのかも…」
私の言葉は途中で遮られた。梨緒の視線によって。
「甘いですよ。先輩。私は、この世には"救いようのない魂"もあると思うんです」
梨緒は私を見てきっぱりとそう言った。
「冷たいねぇ」
伽耶が眉を上げる。
「私が向き合ってきた怪異はそういったものばかりでした。生前、私利私欲にまみれた利己的な人生を送り、死んでからも暴走している。だから私は…そういった怪異を殺して回っている」
梨緒の考えは、私たちとは違う。完全に。
沈黙が流れた。
どこかで鳥の飛ぶ音がした。
「そろそろ帰った方が良いんじゃない」
「賛成ー。日焼けしちゃう」
春香がぴんと手を挙げた。
「そうだねぇ…」
伽耶も頷き、私たちはぞろぞろと小屋から出ようと歩き出した。
突然、伽耶が、ぴたりと立ち止まった。
「どうしたのー」
春香が唇を突き出して眉を顰めた。
「ねぇちょっと…今…誰が言った?」
伽耶は振り向かないまま、そう言った。
「今のは私だけど?」
春香がつんつんと伽耶の背中をつつく。
「そうじゃなくて…その前。誰が"そろそろ帰った方が良い"って言ったの」
伽耶は前を向いたまま、静かに拳を握り締めた。
「えっ…?」
「誰がって…」
私はヒヨコと顔を見合わせた。
「誰が…"そろそろ帰った方が良い"って言ったのって!」
伽耶はもう一度、今度は強い口調でそう言った。
それは──
──誰だ?
思えば聞き馴染みのない声だったように思う。
私は、周りを見渡すのが怖くなって、下を向いた。
小屋を出ようとして立ち止まった私たちの足が見える。
そこから伸びる影が─
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
五つ。
六つ。
…七つ。
あるはずのない七人目の影がゆらりと揺れた。
影は液体のように滲み広がり、私たちの影を飲み込んでいく。
心臓が、蝉の鳴き声を掻き消すほど大きく鳴る。
きんっと何か鋭い音がした。
瞬間──影は消えた。
汗がどっと全身の穴から吹き出し、私の身体を濡らした。
「ちょっと!あんた馬鹿!?なにやってんの!?」
伽耶の声で私は顔を上げた。
「うわぁー!」
春香が、梨緒の方を見て飛び上がった。
梨緒は何食わぬ顔で立っている。
包丁を手にして──。
「落ち着いてください。今、彼女を追い払えたのは、これのおかげです」
梨緒は包丁の刃先を床に向けた。
「これは…私が偶然手に入れたものです」
包丁の刃には般若を思わせる模様が刻まれており、柄の部分には花柄の華やかな模様があしらわれている。
「詳細は分かりませんが…これには強大な力が宿っている。私がまさに救うようのない怪異に殺されかけた時、私の前に偶然、現れました。これは宿命だと思ったんです。救いようのない魂を…私の手で葬れという…」
梨緒は静かにそう言って般若の包丁をしまった。