シニンノカゲ:1章part0
🕑 Added 2025-04-26 14:32:54 +0000 UTC
0. 旧校舎
──死者に幸あれ──
※
本当は良く無いって分かってる。だけど、一回だけ。一回だけで良い。この一回で、全て済む。
羅那の持つ探究心と、彼女の欲望も全て。
真夜中の学校に忍び込むのは初めてのことでは無い。
だけど、羅那の緊張感はまるで初めて真夜中の学校に忍び込む時と同じくらい高まっていた。
規則を破っているという事実だけが緊張感を高めているのではない。
ここが、もう何年も人の出入りしていない"旧校舎"だからでもある。
ここに、何かが潜んでいるかも知れないから──。
ここは普段、羅那たちが過ごす"人で溢れた新校舎"とは違う。
ここに人はいない。
羅那たちを除いて。
カビ臭くて、ホコリ臭くて、知らない臭いが立ち込めている。
羅那たちは、吸い込まれるように玄関扉を潜る。
「ここ、閉めておくね」
誰かが言った。
「待って。すぐに出られるように扉は半開きに──」
羅那の言葉を待たずに、玄関扉の閉まる音がした。
「あ、閉まっちゃった」
誰かが驚いた声を上げる。
羅那を含めた全員が、閉まった扉の方を見つめていた。
扉の近くには誰もいないように──見えた。