退魔の領域~一之瀬栞梨の場合~第2話 潜入任務②
🕑 Added 2020-10-28 18:05:01 +0000 UTC
「…っぅ…ぁっ…ううっ…こ、ここまでっですね…」
霊力で編んだ糸を右手で巻き取りながら、百メートル近く上方の矢を打ち込んだ目的のフロアの窓まで来ていた。
栞梨は淫紋に改造された身体で、霊糸を巻き取るときに発生する快感にぴくぴくと豊満な肢体を震わせて熱い息をぜぇぜぇと吐く。
身体の中から霊力を糸として引き出されていく感覚は皮膚を体内からさわさわと撫で上げられるようで、その異質な感覚は栞梨の理性を妖しく揺さぶった。
地上二百メートル近い上空の風が火照った身体に心地いい。
これよりフロアより上は窓がなくそれが雲の上まで続いている。
栞梨の目指すデータ区画はこの一番上だ。
一度突入すれば、簡単には脱出できず、データを入手したうえで、ここまで戻ってこなければならない。
簡単に脱出することはできない。
(…っ…!一体何を考えて)
そのことを意識した瞬間、栞梨は身体が疼くような感覚を再び覚えたが努めて打ち消した。
栞梨は矢から伸びる霊糸の長さを調節するとフロアのガラスに身体を近づけ固定する。
態勢を安定させると、太ももに巻いたタクティカルベルトから無垢の金属でかたどられたナイフを抜く。
ナイフに霊力を籠める。霊力を放出したことで漏れそうになる嬌声をぐっとこらえ、素早い動作でガラスに向かって振った。
ビルの窓は強固な防弾ガラスだ。
だが、キシッっと軽い音がなると、ガラスは栞梨がくぐれる程度の円形に切り取られた。
切り取られたガラスは、室内外の圧力差によって外側に吹き飛ぶ。
吹き飛んだガラス片は二百メートルのはるか下方に消えていく。
栞梨は一瞬早く身を躱し、それを避けていた。
同時に、ガラスに空いた穴に身体を滑り込ませる。
フロアは、まだ一般の人間も立ち入る場所だからであろう。毛足の長い絨毯になっており、栞梨の足音を消した。
栞梨は先ほど開けたガラスの穴に向かって、腰後ろのポーチからソフトボール大の球体を取り出し、放り投げる。
球状の物体はパッと広がると、ガムのような薄く白い粘性の物質となり、穴にへばりつきそれを塞いだ。
「便利なものですね…」
霊糸を吐き出す矢も、ガラスを切り裂くナイフもこの球体も協会が潜入にあたって用意した装備だ。
栞梨もこれらの装備があったからこそこの潜入任務を渋々と承諾したのだ。
装備はその性能を遺憾なく発揮し、いきなりターゲットの懐深く潜り込むことができた。
そう、撤退が容易でないほど深く。
強いて文句を言うとすれば、どの装備も霊力の消費がそれなりに大きい点だ。
協会が言うには、試作品の装備であるということと、今回は潜入任務であるから、問題はないということだ。
だが、霊力を使う栞梨の身体は淫紋の改造によって、霊力を使う度に快感を感じてしまう。
そのせいで栞梨は身体の中から湧き上がる淫熱に熱い吐息を吐き、甘い声を噛み殺している。
特に霊糸を百メートル近く生成したのが消耗が大きかった。
残りの霊力は7割といったところだ。
今回の任務では淫魔との戦闘は想定されていないので問題はないはずだが、それでも退魔師としては任務が本格的に始まる前からこの状態では落ち着かない。
だが、文句を言ってばかりもいられない。
栞梨は呼吸止め、湧き上がるような疼きを身体の奥に押し込めると、薄く汗の浮いた妖精のような小顔を上げて立ち上がる。
「監視カメラは…大丈夫みたいですね」
栞梨の視線の先には、フロアの通路を監視する監視カメラがあった。
普段は一定周期でせわしなく動くカメラは、その動きを止めている。
協会からの事前のハッキングでカメラの映像は何もないフロアの映像に差し替えられているはずだ。
カメラが動いていないところを見ると、その手続きは問題なく行われているようだ。
それを確認すると、栞梨は口布を引き上げ、フロアに踏み入った。
そして、上階を目指すためにヒールブーツを音もなくフロアに突き立て、影のように素早く進み始めた。
だが、栞梨がカメラから目を離しフロアの廊下の角を曲がる寸前、消えてい派はずのカメラの録画中ランプがともった。
そして、美少女退魔師の後ろ姿をなめるように小刻みにフォーカスが調整されその姿をカメラの向こう側の誰かに鮮明に送信した。
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「はぁ、はぁ、はぁ…っ…」
二十分後、栞梨は順調にフロアを上っていた。
全行程のちょうど中腹当たり。ここまでくる間のカメラはすべて停止していた。
潜入が露見したような様子はない。
だが、栞梨にはこの沈黙がなぜが不気味なものに思えてならなかった。
自分は重要な何かを見落としているのではないか?そういうつかみどころがなく漠然とした不安だ。
そして、もう一つ、潜入中の美少女退魔師には現在進行形で無視できないことがあった。
「ううっ…くっ…」
(お、おかしいぃっ…か、身体がっ…なんですかこれは…)
栞梨はついに身体の中心から湧き出てくるような疼きに耐えきれず、階段の踊り場に膝をついてしまった。
腰奥からジクジクと湧き出す疼きによって無意識に内股になってしまい、タイツ生地のニーソックスに包まれた太腿同士を擦り合わせてしまうのが我慢できない。
快感に耐えるために、両腕で身体を抱き、唇を噛む。
(れ、霊力を使ったことによる疼きにしてもっ…ううっ…つ、強すぎる…)
潜入のために霊力を使った。
しかし、それを考慮しても淫紋が活性化するのが早すぎる。
栞梨は必死に原因を考える。
だが、その思考も、身体を襲う疼きに押し流されてしまい全く考えがまとまらない。
「うぁっ…」
拍動のリズムで身体の奥から湧き出す快感に眉根を寄せ、いつもは涼し気に取り澄まされた美貌を歪める。
口布の下では、真っ白な頬が燃えるように赤く染そまり、色素の薄い唇からは荒く熱い息が繰り返し吐き出される。
鼻までを覆う口布は、荒い呼吸と口端から漏れる唾液で黒生地がべったりと顔に張り付き、息苦しい。
霊力の特性によって稲穂のような見事な金髪アシメのショートカットは脂汗に濡れ、額や頬にばらばらとへばりつく。その様子は色素の薄い美貌に人間らしい生々しさを与えていてなんとも艶めかしい。
サイハイニーソックスが食い込む脂肪が乗ったむっちりとした太腿や肩口までのグローブに包まれた細腕には大粒の汗が光り、じっとりと汗ばんだ肢体に極薄の密着スーツがぴったりと張り付き、豊満なバストから続く細いウェストと縦にすっと通った臍から下腹部へのラインを強調して色素の薄い真っ白な肌色を透けさせている。
くびれから続く丸みを帯びた臀部とすらっと伸びた肉付のいい美脚は快感に震え、装甲ブーツのヒールが弱弱しくフロアを叩く。
腋窩や豊満な胸元、桃尻の谷間など極薄黒衣の戦闘スーツに窮屈に押し込まれた肉と肉の隙間に汗が流れ込み、わずかに動くたびに擦り合わされ蒸れた肉同士が擦り合わされる感覚が神経を逆なでする。
切れあがったハイレグボディスーツを重力に逆らい押し上げる巨乳の先端では乳首が勃起してしまい、タイツ素材の薄布を押し上げている。
秘所を守るクロッチはすでに愛液でわずかにその色を濃くしてしまっている。
栞梨の身体の反応は、彼女が明らかな発情状態であることを示していた。
(で、でもそんなはずは…)
だが、栞梨にはその原因がわからない。
栞梨は熱い吐息を吐きながらグローブに包まれた細指を動かし、狩衣のセンサー情報を視界に表示する。
センサーの示す数値では、周囲に毒物や淫魔の存在がないことを示している。
異常はないはずだ。
フロアを上り始めた当初からわずかな疼きは感じていたが、狩衣のセンサーデータはなにも異常を示していなかった。自分の気のせいだと思い努めて無視しながらここまで登ってきたが、ついにそれが我慢の限界を超えた。
「一体これは、はぁ、はぁっ…」
うつむいた美貌から汗がフロアに滴る。それを手の甲で拭う。止まったらだめだ。立たなければ。そう考え顔を上げる。
と、そのとき、フロアのカメラに録画中の緑のランプが灯っているのに気づいた。
「っ!?」
(気づかれた!?)
栞梨の顔から血の気が引く。
最悪だ。いまはちょうど中間地点。戻るにしても進むにして距離は同じ。
栞梨は一瞬逡巡する。
だがその逡巡が致命的だった。
空気を引き裂く羽音と床を固いものが転がる音。
栞梨が今まで登ってきた階段の下方向から掌大のドローンとバレーボール大から大玉大の球状の警備ロボットが大挙して押し寄せてきた。
(しまった…!)
退路をふさがれた。進行方向には何もない。退路には大量の警備ロボット。
今の身体であれだけの警備ロボットの群れを無事に抜けられるかはわからない。
(どうせ距離が一緒なら…!)
梨織は、悔し気に口布に包まれた唇を噛みしめると快感に蝕まれた身体に鞭をうち、立ち上がる。そしてそのままビルの屋上方向に向けて走り出す。
だが、栞梨は引き返すべきだった。
彼女はこの後、自分の判断をいやというほど後悔させられることになる。