スライム娘の混ざり合い 2
🕑 Added 2024-01-27 05:00:00 +0000 UTC
「あ、ちょっと待っててね。機械の操作まだ途中だった……ちゃんとしないと、変身した後に戻れなくなるから」
「ちょっとあんた何言ってんの⁈」
私は思わず大声をあげた、頭が混乱しているのかもしれない。
それでも目の前で機械をいじり始める瑞樹は、きょとんとしたまま、
「や、だから、元に戻れなくなると困るから、きちんと元に戻れるように……」
「そこじゃない! いやそこもだけど! スライム⁈ スライムになるの私⁈」
「うん」
うんって……
簡単に言ってくれるな。
「意味が分かんないんだけど! え、何、どういうこと⁈」
混乱の極致にいた私に、瑞樹はへらへらと笑いながら、
「大丈夫、意味が分からなくても体はちゃんと変化してくれるから、少しずつ溶けていくだろうから、体で覚えれば大丈夫だよ」
「だから、そういうことじゃなくて……ああ……」
呆れた。今に始まったことじゃないが、この瑞樹という友人には、いつも予想を飛び越えられてばかりだ。
こんな訳の分からない人間なのに天才で、そのうえなぜか私になついていることが本当に理解に苦しむ。
胸もおっきいし、見た目も童顔でモテるし……それに比べて私と言ったら、勉強こそ頑張ってきたけど、見た目も中身も所詮凡才、これといってとりえもなく、どうせこれからも……こほん、やめやめ。
落ち着いてきたのはよかったけど、嫉妬している場合じゃない。
「ねえ秋ちゃん。体に変化はない? 痛くない?」
瑞樹が心配そうに聞いてくる。心配するならそもそもこんな、人体じみたことをしないでほしいのだが、しかし状況が状況だ。
何かあった場合、この状況を打破できるのは瑞樹しかいない、こんな危ない実験だ、少々の異変も見逃せない。
「今のところ大丈夫だけど……うっ……!」
「秋ちゃん⁈」
唐突に体が熱くなってきた。どうやら変化が始まったらしい。明らかに感じたことのない種類の暑さが、私のおなかあたりから全身に広がってゆく。
「な、に、これっ……!」
声を出すこともおぼつかない。痛みこそないが、代わりに体がむずむずするというか、身体の構成が別のものに変わっていくような、えも知られぬ感覚を覚える。
どうにかしようと無意識に腕を伸ばした瞬間……その腕が、どろりと溶け落ちた。
「ひっ……! なにこれっ!」
思わず悲鳴を上げる私。当たり前だ。腕が溶けてまっとうな思考が保てるものか。
しかし、直後に瑞樹の能天気な声が聞こえてきた。
「あ、よかったよかった、ちゃんと作動してる!」
そういう問題じゃない!
「瑞樹、やめ、助け……!」
実際今までで経験のない感覚で、そして、頭がおかしくなるほどの恐怖に見舞われた私は、必死に瑞樹に助けを求めようとした。
しかし、最後まで言い終わることはできなかった。体の変化が起こりすぎて、声さえ出すことが叶わなくなったのだ。
「~~~~~!」
服から体が溶け落ちていく。緑色の粘液のような体として、ずるずると落ちていく私は、もはや人間のそれでは絶対になく。
(手が、声がっ! 嫌っ、嫌あッ!)
瑞樹のようにかわいらしさはないけれど、それでも女性として積み上げてきた、努力してきたスタイル、衣装。姿かたちが、あっという間にどろりと溶けて、失われていって。
最早恐怖で思考もまとまらず、悲鳴をあげようにも声すら出せず、ただただ緑色のスライムとして、どろりと溶けるほかにはなくて。怖ろしくも、不思議なまでに痛みはなく、若干気持ちよく感じてさえしまっていて。
そして、最後には……目も口も、身体のすべての部位が消え失せて、衣服だけを残し。私を証明する者のすべてを消し去って、あとには緑色の液体だけが、小刻みに震えていた。