石棒の愛 前編
🕑 Added 2023-05-06 07:00:00 +0000 UTC
「ど、どうですかセンパイ。気持ちよく、なってますか?」
私が恐る恐る『それ』をさわさわすると、びくりと、動かないはずの石像から、反応が返ってきました。
わずかに脈打つような、そんな感じです。
「苦しんでるくらいなら、せめて気持ちよくなってくれてたらいいなあ……」
(ひあっ! な、なにこれっ、やめ……っ、そ、そんな、さわさわと、さわるんじゃない、わよっ……んっ!)
センパイの声はいまだ何も聞こえません。
それでも、センパイと後輩の絆はそんなに柔いものでもありません。愛があれば、大体のことはわかったりするのです。
まあ差し当たって、元に戻りたいというのは本心でしょう。
「こんな姿になっちゃって、すぐに元に戻してあげますからね、センパイ」
(んひゃああっ! な、撫でないでっ、だめええっ!)
何やら悲鳴のような声が聞こえたような気もしますが、きっと期のせいなのでしょう。
なにせ、今のセンパイは、誰もがうらやむ完璧な女子高生などではなく……
「石棒っていうんですよね。これ」
石でできた古代のディルド、つまり、時代は違えどおちんちんになってしまったのですから。
「どう? 真由ちゃん、センパイ治りそう?」
「う、うん、今いろいろやってる」
「そっかー。センパイも大変だよねー。頑張ってくださいね、センパイ」
美香ちゃんがセンパイの頭、おちんちんの先っぽをやさしく撫でてあげました。
男の人のあそこを触るのは思うところがありますが、石でできた偽物ですし、何より大事なセンパイです。
だから、私も一緒に撫でてあげます。
(ひああああっ、お、おねがいっ、やめっ、ふたりしてっ、そこ、なでないでっ、敏感なところっ……やめてええっ!)
苦しそうな、しかし、とろけるような声。嬌声と表現していいのかもしれないそれに、しかし残念ながら、この時の私は気づきませんでした。なので、これはきっと勘違いなのでしょう。
(はああっ、あっ、そこ、へんになるっ、やだっ、ああっ!)
ただ、分かっていようがいまいが、私の行動は何一つ変わらなかったことでしょう。
ここは美術室。オカルト研究部が隣にある、しかし、何の変哲のない美術部です。
それがいかに卑猥であろうと、デッサンの対象から目を背けるなど、ありえません。大好きなセンパイが相手なら、なおさらです。
「たくましくて素敵ですよ、センパイ」
(ひうっ、見、見ないでえっ!)
きっと、恥ずかしがっていることでしょうセンパイに、しかし私はますます胸が高まって。
ニコニコしながら、絵筆を取り出しました。
「にしても、オカルト部もなかなか面白いもの持ってきたよね」
「石像になる黒魔術って。てっきり先輩をミロのヴィーナスにでも変えてデッサンするつもりだったのにね。まさか石のディルドに変わるとはね……」
「大丈夫ですよセンパイ。みんな先輩のこと大好きですから。どんな姿になってもセンパイは先輩ですよ!」
部員のみんながセンパイに励ましの言葉をかけます。
実際、先輩の人気は本当に高いですし、私だって先輩のことは大好きです。
もしも落書きが許されるなら、先輩の先っぽのところに、真由と記入したいほどですから。
まあ、作品に落書きはご法度です。
「だから、これで許してくださいね。センパイ」
びくびくと、動かないはずの石棒が震えます。
「気持ちいいですか? センパイ?」
(ひぎいいっ、や、やめ、もうやめ。てええっ! んあああっ! 変に、変になるうううっ!)
「真由ちゃん、先輩はなんて言ってるの?」
「うーん……もっと気持ちよくなりたい、とか? やっぱりこれ、お気に入りなんだよ。きっと」
そういって再び湿らせた筆で、ゆっくりと肉棒をなぞり始めます。
先端を重点的に。それから根本。かりの部分も忘れずに。
(違うっ、そんなこと言ってないっ、んひゃあああっ、それ、やめてええっ! からだじゅうくるしくてびくびくしてっ、うあああっ!)
……多分、とても気持ちいいんじゃないかなと、私としては思っていたりして。
「あんな可憐なセンパイが、こんな卑猥な姿になっちゃって……うっとりしますようっ」
新たなギャップをひとしきり楽しんだ私は、周りの面々を見渡して。
「じゃあ、本題。センパイの初めて。私たちの初めて。誰が奪う? 奪われる?」
瞬間、全員の手が上がります。
ええ、分かっていますとも、私だって負けるつもりはありません。
「……まあ、そうでしょうね。私だって負けるつもりはないから」
(ひゃああっ、真由っ、やめ、そこ、敏感でっ……んひゃあああっ、やめてえっ……)
センパイの、おちんちんの先端を手のひらで撫でまわしつつ、私は思いました。
センパイと私のはじめては、誰にも譲らない。と。