最近のシェーバーはすごい 後編
🕑 Added 2022-09-03 04:00:00 +0000 UTC
「ただいまー……さて」
家に帰ってきたはいいが。目の前のこいつはただのシェーバーではない。中身が女子大生となると、あんまり雑に扱うこともできない。
お好きなように、モノとしてお使いくださいと言われたが、あんまりにあんまりなことはできない。というか、普通の感性じゃ不可能だ。
「ただ、せっかく買ったものを使わないってのも、俺の選択肢にはないけど……」
「……」
シェーバは何も答えない。当然といえば当然か。
「そもそも発声機能はついてないのが普通だしなあ。……悪いけど、使うぞ?」
汗臭いのは嫌だったみたいだから、今回はキチンと手を洗って準備は万端。
握りしめた瞬間に、ビクッと一瞬だけ震えるも、観念したようにおとなしくなる。
「なるほどなあ。喘ぎながらしか声が出ないのか。面倒な仕掛けしてくれるな」
(んひゃああああっ⁈ い、いきなり電源入れないでっ、んああああっ!)
「あ、ごめん。でもこうしないと意思疎通できないし」
電源を入れる必要はあったし、なにより、
(はあっ、はあっ……買ってくれたのはうれしいけど、な、なるべく優しく・・・・・って、ちょっと、待って、それ、待って、いったんその手を置いて、ね?)
俺が何をしているのか分かった彼女は、本気でおびえたように俺を説得にかかるが、仕方がない。
「とりあえず新品を買ったら、充電するだろ……まあ、ちょっと我慢してくれ」
(え、うそ! ま、待って、や、あ、あああああああああっ! はしってるっ、わたしのなかにでんき、はしってるっ、だめっ、や、やめてえっ、おしりから電気きて、変になるから、や、やめへええっ! んやあああああっ!)
「……まあ、そうだろうな」
想像したくもない。せめて近くで見守ってやろうとして、結局一時間ほど、ビクンビクン震える彼女を見つめ続けた。
(ぐずっ、あ、ああっ、はあっ、お、おわったっ、も、もう、むりぃっ……)
「ん、お疲れさま。ええと、さすがに今から使うのは無理か?」
(、だ、大丈夫っ、どうせなら、ひ、一思いにっ!)
「そ、そうか……」
まあ、散々電気流されて、散々喘がされたのだ、頭が変になっていてもしょうがない。
ならば、その心意気にこたえてこそ男というもの。
「そこまで言うなら遠慮しないぞ。しばらくの共同生活だが、とりあえずこれができなきゃ話にならないからな」
(わ、わかってるっ、ふぁあっあっ、だ、だめっ、そんなふうにごういんにおしつけないでっ、だめえっ)
言い方が卑猥だが、押し付けねばひげなんてそれやしない。
しっかり深剃りするために、もっと強くしたかったのだが、
(だ、大丈夫よっ、私、新製品になってるからっ、軽く押し当てるだけで、十分だから、んあっ、あんっ、やあああんっ、だ、だめえっ、体中で感じちゃうっ、ああっ!)
「おお、こりゃすごい。さすがは新型モデル」
何がすごいって、軽く押し付けただけで、向こうのほうからひげをそりに動いてくれる。それにとっても滑らかだ。滑るようにつるりとひげをそり、触ってみるとしっかりつるつるだ。
そして、沿った端から彼女の喘ぎ声が聞こえてくるのだから、後味としても最高だ。気分がいい。
(んっつ、早く終わってようっ、ああっ、わ、わたしもう、もうだめになるからっ、あああっ!)
必死に悶えてくれるので、こちらも何か会話を振ってやりたくなる。
ええと、あ、これだ。
「そういえば、髭剃りってことは、今君の体内に、俺のひげが蓄積されて行ってるんだよなあ」
(ううっ、かんがえないようにしてたのにっ、いま、そんなこと言わないでっ!)
「ご、ごめん……」
おっと、怒らせてしまった。というか、泣かせてしまった。事が済んだらきちんとあらってやらないとな。
「もうすぐ終わるから、もうちょっとがんばれ」
(んあっ、んああんっ、あんっ、あっ、ああっ、も、もうだめっ、わたしっもう、もうっ)
キュイイン、と、機械特有の音が響く、それも、先ほどよりも大きな音だ。どうやら、本当に限界が近いらしい。
「あと三秒でいいから、もうちょっと待て、な?」
と、俺が懸命に声をかけるも、遅かった。
(ああっ、わたしっ、や、イッちゃう……もう、だめぇえっ……んあああああっ!)
ギリギリ、俺が最後のひげをそり終えたところで、新品の電気シェーバーは、突如として、ドクンドクンと、脈打つように痙攣したのだった。
(んああっ……え? ここ……あっ)
「ん、起きたか。ちょっと待ってろ、今洗浄中だ」
無事ひげをそり終えて、水道水でいろいろ洗い流していると、小さな吐息とともに、彼女の声が聞こえてきた。
やっぱり中身が女の子だと認識すると、若干触り方もいやらしくなってしまう。うん、ダメだ。紳士的に優しく、優しく……
「痛いとことかあるか? まだ不快感あったりするか?」
(んッ……だ、大丈夫、っ、このまま、お願い……)
小さな喘ぎ声を漏らしながらも、どうやら嫌がってはいないらしい。
「……まあ、これが終わったら、自己紹介からだな。半年間、髭剃りとしては頑張ってもらうわけだし、お互い楽しく暮らせるように……」
(……うん……あっ)
聞き分けのいい電気シェーバーは、同意とともに、小さな吐息を漏らした。