ボイスレコーダーの間違った使い方 ③
🕑 Added 2022-04-09 04:00:00 +0000 UTC
「あんっ、先生、そんな、今日は最初から激しいのね……」
「むほっ、ははっ、黙ってわしの言う通りにするのだぞ、ははっ!」
「あっ、やあああんっ」
そして行為が始まる。
「ほらほら、ここがいいのか!」
「ああんっ、そこですわっ、はあああんっ!」
(や、あの親父、気持ち悪い……っ、ヤダぁ……うっ、見たくないのに……っ、でも、身体、覚えなきゃ……っ)
二奈の気持ちに反し、身体は記録を求め、呻き続ける。
(き、きろくしなきゃ、覚えなきゃ、音声を、で、でも、いやだなあ、でも…‥か、体に染みついてくるようっ、あっ、やだっ、やらしい声が、体中にまとわりついてきて、あっ……)
聞きたくないのに、忘れたいのに、その音声を体が求めていて、
「ほら、うけとれいっ!」
「あひゃあああんっ!」
(やだ、ヤダあアアッ……)
行為が終わるその瞬間まで、ボイスレコーダは使命を果たす。気色の悪い男の声と、それに犯される女性の声を、二奈はその体全身を使って、データとして飲み込んでいく。
(あれ……ここは? あ、ホテルだ。ああ、私、気を失ってたの……?)
ボイスレコーダーとして録音に集中した結果、自我が薄れていたのかもしれない。
中々怖いなと思いつつ、しかし、誰も回収に来てくれないことは、もっともっと怖かった。
見ると、男の方は疲れて眠ってしまったらしく、むこうからシャワーの音が聞こえる。
どうやら、行為は終わった後らしい。
(あっ、出てきた……ほんと、きれいな人……あ、止まった)
二奈の隠し場所に気づいているらしい彼女は、二奈の前で腰を落とし、
「ふふっ。こんなになっちゃってるけど、女の子なのよね。こんにちは」
(こ、こんにちは)
ボイスレコーダーの小さな音声機能で、小さく返事をする。相手が若干驚いたように見えた。
「あ、可愛い声。こんな姿になっちゃってまで頑張って、偉いわねえ」
「ど、どうも……むぐっ、ちょ、ちょっと……」
胸に押し付けられて、不思議な気分になってしまう。女性同士のスキンシップは当然経験もあるが、手のひらサイズの小さなボイスレコーダーからすれば、身体全体で胸にうずまるようなものだ。
「私、三木っていうの。二奈ちゃん、私の部屋、行きましょ?」
『ま、待って、胸元にうずめないで、むぎゅっ……』
巨大な谷間にボイスレコーダーを隠した三木は、寝てしまった男から逃げ出すかのように、二奈とともに部屋を出ていった。
「ふー。やっぱり自分の部屋が落ち着くわね‥‥…どう?」
『三、三木さん、く、苦しいですっ、は、早く出してっ、むみゅっ⁉』
「ふふん、女の子をまるごと胸の谷間に閉じ込める。やってみたかったのよねー。どーう? おっぱいに包まれて、ずっとここにいる?」
『んー!! んむぅっ‼』
胸に挟まれているせいか、声もまともに聞こえない。しかし、それでも必死に伝えようとする様子が、三木の心をきゅんとさせた。
「ふふっ、可愛いわね。ごめんなさい。ちょっとからかってみたかったの。出してあげる。ん、んっ、よいしょっ」
『んっ、ぷふぁっ……も、もう、いじめないでください……』
巨乳の暴力から解放された二奈は、部屋のレイアウトが一変したことに気づいた。
先ほどまでの醜悪な雰囲気はなく、自分は三木の掌の上にいて、にこにこと笑う彼女に両手で軽く握られている。
『あ、あの……』
「ん?」
『そ、そんな風に揉まれましても……な、なんか恥ずかしいというか……』
「そう? 私は二奈ちゃんの反応を想像するだけでうれしいわ。ねえ、普段の二奈ちゃんってどんな顔してるの? 今度オフ会しましょ、ね?」
『は、はあ……』
ペースを握られていることだけは分かる二奈。
普段から情報収集に関してはプロを自負しているが、今の二奈は人間ですらないのだ。回る頭もありはしない。
それでも、せめてものプロ意識で、
『し、仕事をしましょう、三木さん、話はそれからで……』
「あら、忘れてた。まあ、そうね、一つ確認しなくちゃいけないし」
と、もみくちゃの刑を何とか止めたのである。
「どれどれ、本当に録音できたのかしら」
(あ、やめ、三木さん、押さないで……あっ)
仕事をせかしたのは二奈だったが、言い知れぬ恐怖を察知し、慌てて止めようとする。しかし、仕事モードになっていた三木の指が早かった。
ボタンが押された瞬間、二奈は恐怖の正体を悟った。
『アアンッ、わ、私もうっ、限界ですっ、先生のおチンポっ、たくましくてっ!』
(やだやだやだっ、わ、私こんなこと言いたくないっ!)
瞬間、二奈は自分がボイスレコーダーになっていたことを、心の底から後悔した。
『すごいのっ、私の中、ずんずん来てるのっ!』
(いやああっ!)
己から発せられる声が、死にそうなほど恥ずかしい。
勝手に口が動いて、いやらしい言葉を発するのだ。喘ぎ声を強制されるというのは、理不尽以外の何者でもない。
二奈にとってつらかったのは、それだけではない。
『ぐふふっ、いい眺めだ。ほれほれっ、ここが、ここがいいのかな?』
(やあっ、私、そんな声じゃないっ、そんなゲスな声出さないもんっ、やだっ、こんな汚らしい声、やああっ……)
再生が止まるように、心の底から、絶叫のように懇願を繰り返していると、
『はああんっ、私のおマンコ、こんなにぬちゅぬちゅになってるのぉっ……や、やめて、再生を止めて‥‥…あああんっ、私、先生のおチンポでイカされちゃうのぉっ……』
奇跡が起きたのか、再生途中に別の音声が入る。
様子に気づいた三木も慌てて、
「……あ、あらやだごめんなさい。中身が女の子なのわすれてたわ」
『ううっ……』
ボイスレコーダーとして、再生ボタンを押された以上、どんなエッチな言葉でも、発声する必要がある。そういうものだ。
「よしよし……でも、ありがとう。あなたに頼んだかいがあったわ。あんな風に扱われる私の気持ち、共感してくれる人が欲しくて、つい……」
『ああ、そういう……』
つまるところ、この三木という女性は、自分に共感してくれる仲間が欲しかったらしい。
彼女の個室に移ってからというもの、本音をだらだらと話してくれた。
「私だって、あの人が好きってわけじゃないの。ただ、お金払いがよくて、私にも立場ってものがあったから、あの時は、でも……」
『三木さん……』
「それで、さすがに嫌気がさして……わたしも、こんなにひどい人だとは思わなくて……ありがと」
ちゅっ、と、レコーダーにキスをされる。
『っ、さ、さっきからスキンシップ激しくないですか? 私も女なんですよ?』
「あら、いやだった? 私はいいわよ? 二奈ちゃん可愛いし‥‥…あ! そうだ!」
『……なんですか』
不思議と、期待する感覚が二奈にはあった。エッチな音声だけ録音していたからか、感覚がマヒしていたのかもしれない。
「あのね、二奈ちゃん、あんなゲス親父とのエッチなんて、見るのも効くのもいやでしょうがなかったと思うから、もし、口直しがしたいというなら、二奈ちゃんが嫌じゃないなら、私、なるべくきれいな声で、耳あたりのいい声で……」
そのきれいな声は、レコーダーをマヒさせるのには十分で、
『……ま、まあ、少しだけなら……』