執筆を中止した作品の導入
🕑 Added 2022-03-24 16:01:59 +0000 UTC
ハッピーReバースデーの主人公が通り魔に催眠されたら的なお話を考えてましたが、多忙につき完成させるのが面倒になりましたのでここで供養(そも未完成品の公開は供養に当たるものなのでしょうか?)することにします。
もし気が向いたら遠い将来書き上げるかもしれません。
以下本編↓
「よし、君にしよう」
登校中、背後からそんな声が聞こえた。振り返ると、そこには近所の高校の指定制服を着た男子学生が立っていた。
そして目が合った。先ほどの台詞は、どうやら私に投げかけられたものだったらしい。
「うん、やはり合格だ。君みたいな可愛い女子が欲しかったんだ」
すると彼は私に手のひらを向け、小言でなにかを呟いた。
「あ……」
一瞬だけ、脳内が掻き回されでもしたかのような不快感を抱いた。けれどそれはあっという間に霧散し、一度瞬きを済ませたらもう特に違和感は残らなかった。
「ちょっと、警察呼びますよ?」
そんな私の様子を見て警戒心を露わにスマホを取り出したのは一緒に登校していた友人の綾香だ。
「おっと、それは困る。君、お友達を説得しなさい」
「はい」
命令を受け、私は綾香に向き直る。
「綾香、別にこの方は不審者とかじゃないよ」
「え?じゃあ知り合いなの?」
「知り合いではないけど」
そんな私を訝しむ彼女はさらにこう問いかけた。
「じゃあ、この人はなんなの?」
「決まってるでしょ。
ーー私の、ご主人様だよ」
私の簡潔明瞭な答えを聞いて、けれど綾香はますます顔を強張らせた。
「いけないねぇ。お友達の誤解を解かないと。君、名前は?」
「はい。岩城柚月と申します」
「そうか。じゃあ柚月、俺にキスをしなさい」
「はい」
私はご主人様に抱きつき、それから少し背伸びをして彼の唇に自らの唇を重ねた。
「ちょっと柚月!?あんたなにしてんのっ!?」
突然の叫び声に私は思わず身体をビクつかせた。
「ビックリしたぁ。どうしたの綾香」
「どうしたって、それはこっちのセリフ!あんた、堀内がいるのになにやってんの?」
「堀内って?」
「私の彼氏です」
「ああ、なるほど。彼女の反応ももっともだ」
「なんでそんなに平然としてるの?柚月、あんた二股掛けてたの?」
二股と聞いて、私は思わず首を傾げた。
「綾香が何言ってるのか、ちょっと分かんない」
「だって、柚月は堀内の彼女でしょ?なのにこの男とも付き合ってるんなら、二股以外の何者でもないじゃない!」
「いやだから、この方は彼氏じゃなくてご主人様だってば」
「っ〜!」
なお理解できないでいる綾香に、ご主人様がその手を向けた。
「ま、手っ取り早く君にも催眠掛けちゃおうか。柚月ほどじゃないけど、見てくれは悪くないしね」
「私の友人がお手を煩わせてしまい、申し訳ございません」
「なんの話をしてるの!?いい加減説明し…て……」
どうやら綾香にもご主人様の支配が及んだらしい。
「……騒ぎ立ててしまい申し訳ございませんでした、ご主人様」
「ふふ、気にするなよ。俺は優しいからお前たちの失態には目を瞑ってやる」
慇懃に頭を下げる綾香を見て、ご主人様はご満悦だ。
「さて、俺はもう少し奴隷が欲しいんだが、お前らの周りに候補になるようなやつはいないか?」
「全学年を把握しているわけではありませんが、私どもの学校では柚月を超えてご主人様のお眼鏡に適う女はおそらく存在しないかと」
「え?綾香ってば私のこと過大評価してない?」
そんなことを言われたら私だってつい嬉しくなっちゃうけど、それはそれ。私より可愛くてご主人様が気に入ってくれそうな女の子はまだいると思うんだけどな。
「もう少し自覚持ちなよ?堀内がいるから身を引いてるってだけで、けっこうな男子たちがあんたを狙ってるんだからね?」
「そ、そうだったの?なんだか照れちゃうなぁ」
もっとも、だからといって浮気をするほど私は堀内くんを見限ってはいない。むしろ常時メロメロ状態で、なんならゾッコンまであるくらいだ。自分で言うと恥ずかしいな、これ。
「……あ」
そうだった。彼がいるじゃない。彼のあの力は、きっとご主人様にご満足いただけるはず。
「ご主人様。女の子ではありませんが、必ずやご主人様のお役に立てるだろう人がいます」
「ほう、誰だ?」
「堀内直人……私の彼氏で、私を女に変えた男です」